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    C&S ニュースレター

      C&S ニュースレター No.49
      • Date2024/03/28 15:17
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      • 大法院の2021フ10725判決が提示した「確認対象発明は社会通念上、他のものと区別できる程度に具体的に特定されたものであるか」に対する判断範囲につい
      • 大法院の2022マ5373決定によって確認した「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第4条第1項「営業上の利益」の意味
      • 半導体・二次電池などの特許が増えつつ’23年産業財産権の出願が増加
      • 二次電池特許、優先審査で超格差確保を支援
      • スクリーンスポーツ特許出願、韓国が「世界1位」
      • C&Sニュース

      大法院の2021フ10725判決が提示した「確認対象発明は社会通念上、他のものと区別できる程度に具体的に特定されたものであるか」に対する判断範囲につい  _弁理士 ファン・ウテク
      1. 序論
      特許権における権利範囲確認審判の審判対象(確認対象発明)とは、その審判において対象とした具体的な発明、すなわち、具体的な実施形態、実施例を意味する1。権利範囲確認審判において確認対象発明の特定に関する問題は、審判請求の適法要件であり、請求の趣旨の一部として審判の対象を明確にするものであるという点で非常に重要であるため、審判請求書に添付された説明書及び図面の作成時に留意すべきである。
      それにもかかわらず、審判請求人は、確認対象発明を作成することが容易ではなく、両当事者間で確認対象発明の特定の有無に対する争いが多く、特許審判院や法院でさえ「確認対象発明の特定の有無」に対する判断が容易ではないものと思われるため、対象判決は、確認対象発明が社会通念上、他のものと区別できる程度に具体的に特定されたものであるかについて積極的に取り上げており、これについて検討するものとする。

      2. 確認対象発明の特定に関する大法院の判決
      確認対象発明が適法に特定されたか否かは特許審判の適法要件であって、当事者からの明確な主張がなくても、疑問点がある場合には、特許審判院や法院がこれを職権調査して明らかにすべき事項である(大法院2005.4.29.宣告2003フ656判決、大法院2013.4.25.宣告2012フ85判決等を参照)。
      特許権の権利範囲確認審判を請求するに当たり、審判請求の対象となる確認対象発明は、当該特許発明と互いに対比できるほど具体的に特定されるべきであり(大法院2005.4.29.宣告2003フ656判決、大法院2010.5.27.宣告2010フ296判決等を参照)、さらに、それに先立ち、社会通念上、特許発明の権利範囲に属するか否かを確認する対象として他のものと区別できる程度に具体的に特定されなければならない(大法院2011.9.8.宣告2010フ3356判決、大法院2020.5.28.宣告2017フ2291判決等を参照)。
      確認対象発明の特定の有無は、確認対象発明の説明書と図面を一体に把握し、これを総合的に考慮して判断しなければならないため、確認対象発明の説明書に不明確な部分があるか、説明書の記載と一致しない図面が一部あっても、確認対象発明の説明書に記載されている残りの内容と図面を総合的に考慮して、確認対象発明が特許発明の権利範囲に属するか否かを判断することができる場合には、確認対象発明は社会通念上、特許発明の権利範囲に属するか否かを確認する対象として他のものと区別できる程度に特定されたものと見なすべきである(大法院2010.5.27.宣告2010フ296判決、大法院2020.5.28.宣告2017フ2291判決等を参照)。

      3. 原審判決(2020ホ4969)の判断
      原審判決は、構成図(図1)の記載が第1項発明の請求範囲の記載方式と記載程度に基づいて作成されたものと見られると前提しつつ、構成図の記載で使用された用語、すなわち、(i)基本広告コンテンツ(215)は、広告コンテンツを変更するための補助手段である「タブ」と連携されたものであるが、「タブ」そのものが広告コンテンツに該当するとは見なしにくく、(ii)追加広告コンテンツ(216)は、別途の定義や説明のない「ポップアップ形式」という用語を使用してその技術的意味が一義的に明確であるとは見なしにくく、(ⅲ)使用者の行為情報及び課金遂行の技術的意味とその有機的関係に関して同語反復に近い表現のみをしているだけであって、具体的な技術構成を把握することも難しいものであり、このような記載だけでは、他のものと区別できる程度に確認対象発明の技術構成を客観的・一義的に理解し難いため、構成図の記載だけでなく、定義・説明の記載及びウェブページの記載等を総合してみると、確認対象発明の構成が社会通念上、他のものと区別できる程度に具体的に特定されたとは見なすことができないと判断した。

      4. 対象判決(2021フ10725)の判断
      対象判決は、確認対象発明の説明書に記載された残りの内容と図面を総合的に考慮してみたとき、(ⅰ)基本広告コンテンツはメインページの特定位置に固定的に存在し、広告関連内容を含んでいるものとして記載されており、ウェブのメインページの特定位置に固定された広告タブ部分を指すものと特定されており、(ii)追加広告コンテンツは、基本広告コンテンツの上にマウスポインタを置くことにより、基本広告コンテンツに関連して追加的に表示される広告を意味するものとして記載されており、(iii)課金部は、その説明書には具体的な構成のすべてが記載されていないが、基本広告コンテンツの上にマウスポインタを置く使用者の行為情報を収集し、最終広告費用を精算し課金を行うという内容があり、たとえ詳細な技術構成のすべてが分からない場合であっても、説明書の内容及び図面を総合的に考慮すると、社会通念上、他のものと区別できる程度の具体性そのものを否定することは困難であるため、結局、確認対象発明は、社会通念上、特許発明の権利範囲に属するか否かを確認する対象として他のものと区別できる程度に具体的に特定されたと見なし、これとは異なる判断をした原審判決を破棄・差戻しした。

      5. 結論
      イ.上記大法院の判決は「社会通念上、他のものと区別できる程度の範囲」を特許法院の判決とは異なり、一般的なインターネットの技術に関する知識に基づいて確認対象発明の説明書及び図面を解釈し、やや広く認めたものと思われる。
      ロ.上記大法院の対象判決と原審判決に照らしてみると、確認対象発明が特定され得るように、その説明書及び図面を作成することは容易ではないものと思われるため、確認対象発明の説明書及び図面の作成時に簡略に作成しても、実施形態に基づいて具体的な事項がすべて現れるように作成するなどの多くの努力をすべきである。
      ハ.万一、確認対象発明の特定に何らかの欠陥がある場合は、特許審判院の補正手続き及び/又は特許法院の取消差戻し等の手続きにより、審理期間が大幅に長くなるだけでなく、審判請求自体が却下される危険があるため、これを防止するために、出願人及び弁理士は、権利範囲確認審判の請求時に、確認対象発明の説明書及び図面を通常の技術者が容易に理解できる程度に作成すべきである。


      大法院の2022マ5373決定によって確認した「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第4条第1項「営業上の利益」の意味  _弁護士/弁理士 イ・ジョンウォン

      1. 序論
      不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下、不正競争防止法)第4条第1項は、不正競争行為により自分の営業上の利益が侵害されるか又は侵害される恐れのある者は、不正競争行為をするか又はしようとする者に対して、法院にその行為の禁止又は予防を請求することができると規定する。
      これに関連し「営業上の利益」の意味によって禁止請求権の行使主体が決定されるため、その解釈の如何によって禁止請求権の行使が困難な場合が発生する可能性がある。対象判例は、その解釈及び認定の範囲を積極的に取り扱っており、これについて検討するものとする。

      2. 事実関係
      債権者は2013年9月頃、済州日報社から「済州日報」の名称などに関する使用許諾を得て、その頃から「済州日報」の名称で一般日刊新聞を発行し、新聞業を営んできたが、債務者が商号を「株式会社済州日報放送」に変更し、2015年11月16日から「済州日報」の名称で新聞を発行した事案。

      3. 原審決定(光州高等法院2022年2月14日付の(済州)2021ラ523決定)の要旨
      原審は、不正競争防止法第4条第1項における「営業上の利益」の意味に関して直接的に判断しなかったが、債権者が債務者に同一、類似の題号で新聞を発行しないことを申請する被保全権利が認められると見なすことが妥当であると明らかにした。

      4.大法院の決定
      大法院は、「済州日報」の名称が不正競争防止法上の周知表示に相当するとしつつ、不正競争防止法における「営業上の利益」とは、営業者が営業活動を行いながら享受する固有かつ正当な利益であって、経済的な利益はもちろん、営業上の信用、顧客吸引力、公正な営業者としての競争上の地位などがこれに該当し、その侵害または侵害の恐れを原因として禁止または予防を請求することができる者には、そのような標識の所有者だけでなく、その使用権者など、その標識の使用に関して固有かつ正当な利益を有する者も含まれると判示した。

      5. 判例の意義及び結論
      対象判例は、これについて「営業上の利益」を幅広く解釈し、不正競争行為に対して侵害禁止請求権を行使できる主体を標識の所有者だけでなく、使用者までを含むものとすることを再確認したという点で意義がある(大法院1997年2月5日付の96マ364決定を参照)。
      特に不正競争防止法上の「営業上利益の存在」は、侵害禁止請求だけでなく損害賠償請求及び信用回復請求の要件であるため、不正競争行為により事実上の利益を侵害された者であっても、それが正当な利益であれば権利を行使することができる 道が開かれた点で、知的財産権者を積極的に保護しようとする大法院の態度を窺い知ることができると考える。


      半導体・二次電池などの特許が増えつつ’23年産業財産権の出願が増加

      特許庁は、2023年の特許と商標、デザインなど産業財産権の出願が合計55.7万件を記録し、前年比0.03%増加して上昇傾向に転換したという統計を発表した。
      技術分野別に見ると、半導体(▲12.3%)、二次電池を含む電気機械/エネルギー(▲11.4%)、デジタル通信(▲10.3%)など、先端・主力産業分野を中心に増加した。
      一方、商標とデザイン出願は僅かに減少した。昨年の商標出願件数は25.5万件と前年比1.5%減少した。デザイン出願も5.5万件と前年比2.3%減少した。しかし、商標は広告業、飲食業、コーヒー・パン・お菓子などにおける出願が増え、小商工人や個人創業が商標出願につながったものと見られる。
      特許庁は、グローバルインフレによる高金利状況にもかかわらず、特許を中心に産業財産権の出願が上昇傾向に転換されたのは非常にポジティブなことだと明らかにした。

      原文出所:韓国特許庁の報道資料(2024-01-10)


      二次電池特許、優先審査で超格差確保を支援

      - 二次電池分野の審査処理期間22.9ヶ月→2ヶ月に短縮される見込み
      - 優先審査対象を半導体、ディスプレイから拡大

      国家先端技術に関連する特許出願分野を優先審査対象として指定して運営している特許庁は、半導体、ディスプレイ分野*に続き、2月19日から二次電池分野の特許出願件に対しても優先審査対象として指定して運営する。
      *半導体分野(’22.11.1.)、ディスプレイ分野(’23.11.1.)の優先審査を施行中 – (C&Sニュースレター44号の記事を参照)
      二次電池は、電気自動車をはじめとする環境に優しいモビリティ産業の核心技術であって、技術競争を防御するための特許権確保競争が激しくなる分野である。二次電池分野が優先審査対象に追加されることで、22.9ヶ月かかっていた特許審査が2ヶ月に短縮されるものと見込まれている。
      ただし、二次電池関連技術を他の分野に応用した[例:二次電池装置を含む車両など]出願は、優先審査対象に該当しない。
      こうした主要国家核心技術分野の出願増加は、韓国企業が世界的な不況下においても二次電池、半導体など未来を導く先端技術の主導権を守るために特許権の確保に急ぎ取り組んだ結果と分析される。
      特許庁は、景気不確実性が高まっているにも関わらず、国家核心技術分野を中心に韓国企業の今年上半期の特許出願が増加したことは非常に前向きであると明かした。

      原文出所:韓国特許庁報道資料(2024-02-19)


      スクリーンスポーツ特許出願、韓国が「世界1位」

      スクリーンゴルフ、スクリーンテニスなど、全世界のスクリーンスポーツ市場は2022年に約4.7兆ウォンから年平均13.1%ずつ増加し、2029年には約11.1兆ウォンの規模となり、市場確保のための技術開発競争が激しくなることが予測されている。このように、全世界のスクリーンスポーツ関連特許出願がここ20年間(’02~’21)で、年平均7.8%ずつ増加する中、韓国の出願件数が全出願の58.4%を占め、最も多いことが分かった。
      出願人の国籍別では、韓国(58.4%、1,715件)の出願件数が最も多く、米国(17.0%、500件)、日本(8.9%、262件)、中国(6.4%、188件)、デンマーク(4.1%、119件)の順であることが明らかになった。

      原文出所:韓国特許庁の報道資料(2024-03-03)


      C&Sニュース

      55周年創立記念日イベント(2024.02.23)
      特許法人C&Sは、去る2月23日(金)に創立55周年を迎えました。今回のイベントでは、映画観覧及び晩餐を楽しんだ後、長期勤続者への表彰式の時間も設けました。近年、新型コロナウイルスの影響で静かな雰囲気でしたが、社員達の積極的な行事参加により雰囲気は一層盛り上がり、連帯感を深めることができる貴重な時間となりました。


      弁理士増員のお知らせ
      特許法人C&Sでは、新たに弁理士を迎え、化学分野の業務能力をさらに強化致しました。今後も有能な人材を積極的に確保し、より専門的なサービスをご提供できますよう更なる努力を重ねて参ります。