資料室

    C&S ニュースレター

      C&S ニュースレター No.51
      • Date2024/09/30 17:16
      • Hit 65

      • 許可等による存続期間延長の登録出願の対象発明に求められる「新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質)」の意味 [大法院2024.7.25.宣告2021フ11070]
      • 法改正による技術奪取行為の制裁強化
      • 自然災害予防知能型モノのインターネット(AIoT)技術、韓国が主導
      • ‘23年韓国国内企業の米国特許訴訟は、107件と前年比3.9%増加
      • 昨年、韓国国内知的財産権の出願・登録増加傾向に転換
      • C&Sニュース

      許可等による存続期間延長の登録出願の対象発明に求められる「新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質)」の意味 [大法院2024.7.25.宣告2021フ11070]

      弁理士 ファン・ウテク
      弁理士 ジョン・スキョン 

      1. 序論
      医薬品等の発明を実施するためには、薬事法等により許可等を受けなければならず、特許権者は、このような許可等を受ける過程で、その特許発明を実施できない不利益を被ることになる。このような不利益を救済し、医薬品等の発明を保護・奨励するために、特許法第89条第1項は、薬事法等による許可等を受けるために長期間を要する発明に対して、特許発明が実施できない期間だけ特許権の存続期間を延長する制度を設けた。しかしながら、特許法第89条第1項及び旧特許法施行令第7条第1号* (以下、「この事件の施行令」)は、「薬効を示す活性部分」の定義や具体的な範囲に関しては規定していない。

      今回の寄稿文は、法令で用いる用語の定義や具体的な範囲が明確に規定されていない「薬効を示す活性部分」を通常的な意味に忠実に解釈することを原則としながら、関連法令の全般的な体系と趣旨・目的、当該条項の規定形式及び内容等を総合的に考慮して解釈した大法院の判決を紹介する。

      2. 争点事項
      この事件の施行令条項の規定形式と内容、関連薬事法令等を総合すると、この事件の施行令条項で「薬効を示す活性部分」は、「医薬品の有効成分のうち活性を有しながら、内在する薬理作用によって医薬品の品目許可上の効能・効果を示す部分」を意味する。一方、それ自体としては、活性を有さない部分が従来の品目許可された医薬品の「薬効を示す活性部分」に結合されて、医薬品の効能・効果の程度に影響を及ぼす場合がある。

      この事件の請求項(以下、「この事件の医薬品」)の有効成分であるペグインターフェロンベータ-1aは、インターフェロンベータ-1aにポリエチレングリコール(PEG)を共有結合してPEG化(PEGylation)した医薬品発明である。原告(特許権者)は、この事件の請求項に関する存続期間の延長登録出願を行ったが、特許庁審査官及び特許審判院はインターフェロンベータ-1aを有効成分とする既許可医薬品があり、この事件の医薬品は治療効果を示す活性部分がインターフェロンベータ-1aで既許可医薬品と同じであり、新物質に該当しないという理由で存続期間の延長登録出願を拒絶決定し、原告の拒絶決定不服審判請求を棄却した。

      特許法院は、「この事件の医薬品で薬効を示す活性部分は、ペグインターフェロンベータ-1aであり、活性部分をインターフェロンベータ-1aとする既許可医薬品を考慮しても、上記インターフェロンベータ-1aに結合されたポリエチレングリコールも薬効を示す活性部分の化学構造であり新しい新物質に該当する」と見て、拒絶決定不服審判の審決を取り消した。

      すなわち、特許審判院と特許法院とでは、「活性を有さない部分」が従来に品目許可された医薬品の「薬効を示す活性部分」に結合された場合、その結合物全体がこの事件の施行令条項でいう「薬効を示す活性部分」に該当するか否かについて異なる判断を下した。

      3. 大法院2021フ11070判決の判示事項
      A.大法院は、この事件の施行令条項で定めた新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質)を解釈した後、この事件の施行令条項の規定形式と内容が「有効成分」と「薬効を示す活性部分」を峻別している以上、それ自体では活性を有さない部分が「薬効を示す活性部分」に結合されて、医薬品の効能・効果の程度に影響を及ぼしても、その結合物全体をこの事件の施行令条項でいう「薬効を示す活性部分」と見ることはできず、また特許権存続期間の延長制度の趣旨及び目的に照らしてみても、従来に品目許可された医薬品の公知された活性部分が発現する効能・効果の程度に影響を及ぼすために、それ自体では活性を有さない部分を公知の活性部分に付加した医薬品の発明を、特許権の存続期間延長の登録出願の対象となる発明であると見ることは難しいと法理的に解釈した。

      B.大法院は、上記のような法理解析により、この事件の医薬品の有効成分のうち体内活性を有しながら内在する薬理作用によって再発性多発性硬化症の治療効果を示す部分は、インターフェロンベータ-1a**であり、インターフェロンベータ-1aに結合されたポリエチレングリコール部分は、体内活性や上記のような治療効果を有さず、インターフェロンベータ-1a部分が血液中に長く滞留するようにするか、インターフェロンベータ-1aのタンパク質受容体に対する結合力を下げるなどして、インターフェロンベータ-1aの活性程度に影響を及ぼす部分に過ぎないため、この事件の医薬品の有効成分のうち「薬効を示す活性部分」はインターフェロンベータ-1aであり、ポリエチレングリコール部分が「薬効を示す活性部分」であるインターフェロンベータ-1aに結合されて、ペグインターフェロンベータ-1aを構成しているとしても、その結合物全体であるペグインターフェロンベータ-1aをこの事件の施行令条項で言う「薬効を示す活性部分」と見ることはできず、この事件の医薬品で「薬効を示す活性部分」であるインターフェロンベータ-1a部分は、既許可医薬品で「薬効を示す活性部分」であるインターフェロンベータ-1aと立体的化学構造が同じであると見て、これと異なって判断した原審を破棄・還送した。

      4. 示唆点
      上記大法院の判決は、特許法上の医薬品特許の存続期間延長の登録出願に関して「薬効を示す活性部分」の意味を明確にした。特に活性を有さない部分が結合された場合には、その結合物全体を「薬効を示す活性部分」と見ることができないという点を明確にすることで、医薬品の存続期間延長の登録出願に関する基準を提示した。

      これは医薬品の特許政策と製薬産業に重要な影響を及ぼすと予想されるため、特許出願業務を行う弁理士は、上記大法院の判例を熟知して特許出願の業務を行うと同時に、依頼人の製薬企業に正確な情報を提供して、製薬企業が特許出願段階から慎重に特許管理の戦略を樹立し、法的リスクを最小化するために様々なシナリオを備えることができるように案内しなければならない。

      *特許発明を実施するために、薬事法第31条第2項・第3項又は第42条第1項によって品目許可を受けた医薬品[新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質をいう。以下、この条において同じ)を有効成分として製造した医薬品として、最初に品目許可を受けた医薬品に限定する]の発明を規定している。
      **既許可医薬品の有効成分であるインターフェロンベータ-1aは、タンパク質医薬物質として体内で活性を有し、非正常的な免疫作用を調節することで、再発性多発性硬化症の治療効果を有する。

       


      法改正による技術奪取行為の制裁強化

      弁護士/弁理士 イ・ジョンウォン

      2024年8月21日から施行された改正特許法と不正競争防止法は、特許権者と営業秘密保有者の技術を奪取する場合、その侵害者に対する制裁レベルを高めることを主な内容としている。特に注目すべき変化は、故意による侵害に対する損害賠償額を最大5倍まで拡大したことである。今回のニュースレターでは、改正法の主要内容とその意義について検討する。

      1. 懲罰的賠償の限度上向
      改正された特許法第128条及び不正競争防止法第14条の2は、故意に特許権又は営業秘密、アイデアを侵害した場合、法院が損害と認めた金額の5倍を超えない範囲で賠償額を定めることができるようにしている。これは従来の懲罰的賠償限度を3倍から5倍に上向したことであり、これにより故意に技術を奪取する行為に対して、さらに高いレベルの制裁が可能であると考えられる。

      技術保護に最も積極的な米国の場合にも、特許侵害は最大3倍、営業秘密侵害は最大2倍までの懲罰的賠償しか認められておらず、5倍の懲罰賠償が可能であるようにした国は、中国と韓国だけである。韓国国内では、技術を開発して、特許や営業秘密などを保有するよりは、技術をコピーすることが利益であるという認識が普遍化され、被害企業の立場では訴訟で勝っても損害賠償額が足りず、訴訟を諦める場合が多くなるなどの悪循環が続いてきたが、このような措置によって技術保護に対する企業の認識が変化するものと予想される。

      2. 不正競争行為に対する是正命令制度の導入
      改正不正競争防止法第8条第1項及び第20条第1項第1号の2は、不正競争行為に対して特許庁長が直接是正命令を下せるようにした。従来には、特許庁長が行政調査及び是正勧告をすることができたが、これは強制力がなく、実効性がないという指摘があった。これにより、改正法では、是正命令制度の導入により、特許庁長が違反行為の中止、標識等の除去や修正、今後の再発防止措置などを命ずることができるようにし、是正命令を履行しない者に対しては、違反行為の内容等を公表させるか、または最大2,000万ウォンの罰金を科すようにする内容を含む。

      また、同法第7条の2は、技術奪取被害者の証拠確保の負担を軽減するために、被害者が特許庁の不正競争行為等に対する行政調査に関連する資料の閲覧・コピーを要求できるようにし、同法第14条の7により法院は送付された行政調査記録に含まれた営業秘密の保護のために記録の閲覧範囲及び閲覧者等を制限することができる。

      現行制度は、技術奪取行為に対する特許庁長の措置が強制力を欠くという不備点を改善したものとして、政府レベルでの効果的な対応が可能であると考えられる。

      3. 法人に対する処罰の強化
      改正不正競争防止法第19条及び第19条の2は、法人に対する法定刑を上向して個人に賦課できる罰金刑の上限の3倍まで罰金刑を賦課できるようにし、法人の不正競争行為に対する公訴時効を5年から10年に延長した。一方、不正競争防止法第18条の5は、刑事手続においても侵害行為を造成した物や侵害行為で生じた物を没収できるようにし、民事手続以外にも侵害行為を中断させることができる手段が設けられた。

      従来には、法人に科す法定刑が個人に科す法定刑と同じであったため、法人レベルで行われた大規模の技術奪取行為の処罰水位が微弱であった。また、被害者は侵害禁止訴訟という民事手続を介してのみ侵害行為を中断させることができた。しかし、改正法を介して法人レベルの技術奪取行為を効率的に遮断し、さらに厳しい処罰が可能であると期待される。

      4. 今後の展望及び課題
      今回の法改正により特許権及び営業秘密保護のための多くの制度的変化が行われた。このような変化は、知的財産権の保護を一段階強化する画期的な措置として評価される。企業は、このような変化に注目し、他社の技術を無断で用いたり、または奪取する行為に対してさらに注意を傾け、自社の知的財産の戦略を再点検する必要がある。


      自然災害予防知能型モノのインターネット(AIoT)技術、韓国が主導

      気候変動によって自然災害が急増している中で、モノのインターネット(IoT)と人工知能(AI)技術の融合により災害を予防する技術が注目されている。

      特許庁がIP5に出願された世界中のAIoT基盤の災害予防特許を分析した結果、モノのインターネット(IoT)と人工知能(AI)技術が結合された知能型モノのインターネット(AIoT)を活用して洪水などの災害を予防する技術出願が最近10年('12年~'21年)の間に年平均19.5%増加したことが分かった。

      AIoT基盤の自然災害予防技術は、衛星データ、気象データ、IoTセンサーデータなどのビッグデータを収集し、AI学習を介して被害状況を予測して、位置情報基盤の待避経路を提供する技術である。

      災害類型別に検討すると、地質災害分野の出願量が51.4%と最も多く、風水害分野(23.9%)、気象災害分野(17.0%)、海洋災害分野(7.7%)の順に示された。

      特許庁は、異常気候による自然災害が増えているが、AIoTを介した自然災害予防技術の発展は、自然災害による被害の減少に寄与するものと予想されると明かした。

      原文出所:韓国特許庁報道資料(2024-06-21)


       

      ‘23年韓国国内企業の米国特許訴訟は、107件と前年比3.9%増加

      昨年米国における韓国国内企業と外国企業間の特許訴訟は、107件と前年比3.9%増加したことが分かった。

      特許庁は、韓国国内中小・中堅企業が外国企業を相手に積極的な特許権行使に乗り出したため、中小・中堅企業関連の特許訴訟が'22年の28件から'23年の34件に増加し、そのうち特許訴訟された件に比べて提起した件が多いと分析した。

      一方、大企業関連の特許訴訟は'22年の75件から'23年の73件に減少した。

      産業分野別に検討すると、韓国国内企業の米国特許訴訟は'22年に続き'23年にも依然としてコンピュータ・通信・半導体などの電気・電子分野で主に発生した。昨年の電気・電子分野の特許訴訟は、全体107件のうち85件で79.4%を占めた。

      昨年、韓国国内企業関連の米国特許訴訟107件のうち、韓国国内企業の提訴は23件(21.5%)に過ぎず、韓国国内企業の被訴が84件(78.5%)と、ほとんどを占めたことが分かった。

      原文出所:韓国特許庁報道資料(2024-06-28)


      昨年、韓国国内知的財産権の出願・登録増加傾向に転換

      昨年、韓国の知的財産権の出願・登録件数が2022年に小幅減少した後、再び増加傾向に転じた。

      特許出願が前年比2.4%増加し、特に大学及び公共研究機関での特許出願が9.1%、大企業と中小企業がそれぞれ7.6%、3.9%増加した。これに対し、商標、デザインはそれぞれ1.5%、2.3%ずつ減少して、'22年に続き'23年にも下落傾向が続いたことが分かった。これは'23年の創業減少業種における商標出願の減少による結果と解釈される。

      知的財産権の登録では、特許、デザインが前年比減少したが、商標が28.6%に大幅に増加して、韓国国内知的財産権の登録も再び増加傾向に転じた。

      国際特許出願(PCT)は、昨年、韓国、フランス、オランダを除いたほとんどの国で減少する傾向を見せるが、韓国は前年比1.2%増加して世界4位(前年同じ)を記録した。

      原文出所:特許ニュース (2024-08-27)


      C&Sニュース

      弁理士増員のお知らせ

      特許法人C&Sでは、弁理士を新たに迎え、機械、電子、材料分野の業務力量をさらに強化致します。今後も有能な人材確保に積極的に取り組み、これまで以上に上質なサービスを提供できますよう努力致します。