C&S ニュースレター
C&S ニュースレター No.52
- Date2024/12/26 18:46
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「脱型デッキ用スペーサ」に関する進歩性判断事例[大法院2024. 10. 8.宣告2021フ11216判決]
ブランド品リフォーム行為の商標権侵害の有無[特許法院2024. 10. 28. 宣告2023ナ11283判決]
韓国のLG、グローバルグリーン及び低炭素特許出願1位
大企業・中小企業を共生に導く「商標共存同意制度」
韓国、GDP及び人口比、特許出願世界1位を達成
C&Sニュース
「脱型デッキ用スペーサ」に関する進歩性判断事例[大法院2024. 10. 8.宣告2021フ11216判決]
弁理士 ファン・ウテク
弁理士 アン・ソンス
1. 序論
特許無効を争う審判や訴訟において、主な争点は特許発明の進歩性を備えているか否かである。したがって、特許発明に対する進歩性判断の法理は様々に提示されている。
代表的な進歩性の判断基準は、(1)先行技術の結合において、技術分野の差により技術的に困難性があるか否か(大法院2012.10.25.宣告2012フ2067判決)と、(2)複数の構成要素となっている請求項が、特有の課題解決原理に基づいて有機的に結合された全体としての構成の困難性及び特有な効果があるか否か(大法院2007.9.6.宣告2005フ3277判決)と、(3)特許発明に至ることができるという暗示、動機等が先行技術文献に提示されているか、当該特許発明の出願当時の技術水準、技術常識、当該技術分野の基本的課題、発展傾向、当該業界の要求などに照らして、通常の技術者が容易にそのような結合に至ることができるか否か(大法院2014.5.16.宣告2012フ115判決)であり、(4)上記(2)、(3)の法理を適用する場合には、公知技術に否定的な教えがあるか否か(大法院2012.10.25.宣告2012フ2067判決)と、進歩性判断の対象となった発明の明細書に開示されている技術を知っていることを前提として、事後的に通常の技術者がその発明を容易に発明できるか否かを判断しているか(大法院2010.7.22.宣告2008フ3551判決)に留意すべきこと等がある。
今回の寄稿文では、上記代表的な進歩性の判断基準の中で特許法第29条第2項で定める「その発明が属する技術分野」と上記(3)の様々な先行技術を引用し、特許発明の進歩性の判断などを総合的に考慮した大法院の判決を紹介する。
2. 争点事項
特許権者である原告(上告人)は、特許発明及び先行発明1が、鋼板脱型デッキプレート方式に用いられるスペーサとして型枠方式に用いられるインサートの問題点(美観の阻害、作業不便、型枠合板の再使用不可、埋め込み部分の離脱)の解決を技術的課題とするものであり、先行発明2は、型枠方式に使用されるスペーサであるため、先行発明1及び先行発明2は細部的な技術分野において差があり、さらに、その構成において多くの差があるため、通常の技術者が先行発明1及び2を結合する上で技術的困難性があるだけでなく、先行発明1及び2を結合しても特許発明を容易に導出することはできないと主張する。
これに対して、特許審判院は、登録無効審判で第1項及び第2項の特許発明が先行発明1及び2により進歩性が否定されるとの請求人の主張を認容する審決を行い 、原審も特許権者である原告の請求を棄却する宣告を行った。
3. 大法院の判断
大法院は、独立項である第1項の特許発明の進歩性が否定されると判断した原審が法理を誤解したり、大法院の判例に違反するなどして、判決に影響を及ぼした誤りがないとし、原審を支持した。
A. 先行発明1、2と特許発明が属する技術分野の判断
先行発明1、2のスペーサと第1項の特許発明のスペーサは、いずれもスラブ工法でコンクリートを成形するための産業分野で用いられる技術であり、鉄筋(トラスガーダ)と型枠(デッキプレート)との間に配置される技術的構成であってコンクリートの被覆厚さを確保する作用効果を有するため、先行発明1、2と第1項の特許発明は同じ技術分野に属する。
B.複数の先行文献を引用した進歩性の判断(原審判示の差異点1~4について)
① (原審判示の差異点1) 特許発明の出願当時の技術水準、当該技術分野の発展傾向などを考慮すると、特許発明の出願当時の通常の技術者は、必要に応じて型枠方式に使用されるスペーサや脱型デッキプレート方式に使用されるスペーサを選択的に適用できるため、通常の技術者が型枠方式に使用されるスペーサである先行発明2を鋼板脱型デッキプレート方式に使用されるスペーサに適用することは技術的に困難であるとは言えない。
② (原審判示の差異点2、3) インサート機能が含まれたスペーサは、特許発明の出願当時の型枠方式に使用されるスペーサをはじめ、スペーサ分野で広く使用されていた周知慣用技術であり、先行発明1には、雌ねじを備えることでインサート機能を行う合成樹脂材のスペーサ本体が、スペーサヘッドにインサート射出成形により結合される構成が開示されているため、通常の技術者が先行発明2を脱型デッキプレート方式に使用されるスペーサに適用するために、先行発明1に開示された雌ねじ、インサート射出成形、及び合成樹脂材の構成を先行発明2に結合することが技術的に困難であるとは言えない。また、先行発明2に先行発明1の上記構成要素を結合するために、必ず先行発明2の基本本体に少なくない材料を使用しなければならないと見なす根拠はなく、先行発明2に先行発明1の上記構成要素を導入することが、先行発明2の技術的意義を喪失させると断定することができず、それに関する否定的な教示があるとも見なし難い。
③ (原審判示の差異点4) 先行発明2の支持要素折曲部は、その基本本体と、第1項の特許発明のスペーサヘッド補強片は、そのスペーサ本体とそれぞれ結合程度を強くして離脱を防止する構成要素であり、先行発明2の支持要素折曲部と第1項の特許発明のスペーサヘッド補強片は、その目的と機能が同一であるため、先行発明2の支持要素折曲部の形状を請求項1の特許発明のスペーサヘッド補強片の形状に変更することは、通常の創作範囲内にある単純な設計変更と見なすことができる。
4. 示唆点
大法院の判決は、(1)第1項の特許発明と先行発明の技術分野が同一であり、(2)先行発明2に先行発明1の構成要素を導入することが、先行発明2の技術的意義を喪失させると断定することができず、それに関する否定的な教示があるとも見なし難いと指摘しつつ、第1項の特許発明は先行発明1、2の結合発明によって進歩性が否定されると判示した。
しかし、先行発明1の鋼板脱型デッキプレート方式に使用されるスペーサは、先行発明2の型枠方式に使用されるスペーサのインサートの問題点を解決するためのものであり、上記2つの方式のスペーサは、その使用目的と技術的課題及び課題解決原理が同じであると見なし難く、それぞれの方式によって異なる構造的な特徴を有しているため、相互に置き換えて使用できると見なし難い点に照らしてみると、上記スペーサの目的、技術的構成、作用効果の面を総合的に考慮してみる場合(大法院2003.4.25.宣告2002フ987判決)、先行発明1、2の結合発明が第1項の特許発明と同一であるか否か、及び先行発明2に先行発明1の上記構成要素を導入することは先行発明2の技術的意義を喪失させないか、又は否定的な教示はないか、に対する十分な審理がなされたかについて疑問が生じる。
また、先行発明2の支持要素折曲部の形状をスペーサヘッド補強片の形状に容易に設計変更できるかについての被告の主張は事後的考察に該当するものではないかという疑問もある。
したがって、今後、これと同様の無効訴訟において、弁理士は、上記疑問のある部分に関連してより具体的かつ詳細に対応する必要があると思われる。
ブランド品リフォーム行為の商標権侵害の有無[特許法院2024. 10. 28. 宣告2023ナ11283判決]
弁護士/弁理士 イ・ジョンウォン
ブランド製品を修繕して作った「リフォーム製品」が商標権を侵害したという特許法院の判断が出た。「リフォーム」とは、使用中の衣類などの製品を全く新しいデザインに修繕して新たな製品を作製することを意味し、「アップサイクリング」ともいう。ところが、一般消費者の間で頻繁に行われているリフォーム行為が商標権侵害と判断されたことに関して、業界では相当な議論が行われている。今回のニュースレターでは、対象判決の意義及び今後の商標紛争に及ぼす影響について検討してみる。
1. 基礎事実関係
リフォーム業者Aは、2017年から消費者が製品のリフォームを依頼すると、各製品を分解した後、新たな製品を作製して依頼者に再度引き渡す方式で営業を行っていた。そこで、ルイ・ヴィトン・マルティエは、2022年2月、リフォーム業者Aを相手取り、自社製品のリフォーム行為が商標権を侵害しているという理由で損害賠償を請求した。
2. 1審の判断(ソウル中央地方法院2023. 10. 12宣告2022カ合513476判決)
ルイ・ヴィトン・マルティエの請求について、1審法院では、リフォーム業者Aがルイ・ヴィトン・マルティエの商標権を侵害したと判断した。まず、法院は、リフォーム製品も商標法での商品に該当すると見なした。すなわち、商標法上「商標の使用」とは、商品または商品の包装に商標を表示する行為であり、このとき「商品」とは、それ自体が交換価値を持って独立した商取引の目的物となる物品を意味するというものである。
一方、リフォーム製品の生地には周知著名なルイ・ヴィトンの商標が繰り返し表示されており、このような技術も業界では一般的に使用されているため、商標が非常に目立つという点、及び相当数のリフォーム製品が原告の製品とかなり類似している点を考慮すると、リフォーム製品が市場に流通した場合、第三者が出所を混同する可能性があるため、被告の行為は商標権侵害行為に該当すると判断した。
3. 対象判決の判断及び根拠
2審法院である特許法院も1審と同様に、リフォーム業者Aの行為が商標権侵害行為に該当すると判断した。その根拠として、 ①商標法でいう商品に該当するために大量に生産されるべきものではなく、継続性・繰り返し可能性がある場合、ただ1個だけ生産されても商品に該当し得るという点、②リフォーム製品には、リフォーム前にはなかった原告のロゴが表示された様々な部品が新たに使用された点、③リフォームの過程及びこの事件のリフォーム前、後の製品の差異点などを総合すると、被告は、リフォーム前の製品と比べたとき、製品の個数、サイズ、容積、形状、形態、機能などが著しく異なる新たな製品を生産したものと見られる点、④この事件のリフォーム製品の場合、従来の状態に回復することは、事実上不可能であるのに対し、単純な修繕または装飾の場合、従来の状態に回復することが可能である点、⑤一般需要者が原告の製品と混同する可能性のある製品にリフォームすることが、この事件のリフォーム営業の需要を創出する核心的な要素であるという点、⑥一般需要者は、このようなリフォーム製品の出所が原告ではなく被告であるという事実を認識しにくい点などを挙げた。
4. 示唆点(商標権侵害の有無を決定する具体的な基準を提示)
特許法院は、知的財産権に一般的に適用できる権利消尽原則が、本事案において適用できない理由を詳細に説明することにより、類似の方式の業種における商標権侵害の発生を事前に防止できる具体的な基準を提示した。これを要約すると、①製品を加工する程度が新たな製品を作製する水準に達しないこと、②リフォーム製品が商標権者の他の製品と容易に区別できる程度の差を有すること、③リフォーム業者が依頼人に対して、再販売禁止に関する告知または約定を行うことなどで整理することができる。
関連業界では、自身の営業方式が、特許法院の提示した基準を遵守しているかについて検討する必要があり、加工の程度が高いと思われる場合、再加工の事実について積極的に告知し、再販売禁止約定などを通じて消費者が出所を混同しないように防止する必要がある。
5. 結論
オンラインでの個人間取引が活性化するにつれて、従来は予想できなかった方式の営業が生じており、その波及力も増えている。これにより、製品を購入して加工した後、再販売する方式の営業が知識財産侵害の論難を引き起こす事案も増加している。
一般消費者の立場から、対象判決は、まるで新しい営業方式を阻止する規制のように見える可能性もあるが、特許法院は、リフォーム業者の行為が商標権侵害に該当する理由について詳細に列挙しており、そのような基準によると、本事案のリフォーム業者Aの行為が商標権侵害に該当するという特許法院の判断は、商標権の本質的な機能及びこれを保護しようとする法的趣旨を忠実に反映した合理的な結論であると評価される。
韓国のLG、グローバルグリーン及び低炭素特許出願1位
世界的にグリーン及び低炭素技術の特許出願が増加している中、最近8年間のグリーン及び低炭素特許出願件数を分析した結果、韓国のLGが世界1位を占めたことが分かった。
最近、中国国家知識産権(CNIPA)が発表した報告書によると、2016年から2023年までに公開された全世界のグリーン及び低炭素特許出願件数は約1,275,866件と年平均4.7%増加した。そのうち2023年の特許出願件数は約193,184件であり、前年比13.0%増加し、飛躍的な成長傾向を見せた。2016年から2023年までの、全世界におけるグリーン及び低炭素特許の出願人順位分析では、韓国のLGが日本のトヨタを抜いて圧倒的1位(38,534件)を占めた。
韓国知的財産研究院は、全世界が持続可能な目標(SDGs)の達成を図っている中、韓国特許庁(KIPO)は、最近、炭素低減に寄与するグリーン技術特許の優先審査要件を緩和するなど、気候危機を克服するための積極的な対応を行っていると明らかにした。
原文出所:韓国特許ニュース (2024-09-23)
大企業・中小企業を共生に導く「商標共存同意制度」
特許庁は、商標法の改正により、去る5月から施行されている「商標共存同意制度」が成功的に安着していると明らかにした。
先登録の商標権者が同意すれば、類似の商標であっても登録を可能にする商標共存同意制度の施行('24.5.1)後、過去6ヶ月間('24.5.1~11.6)に合計600件余りが受付されたことが分かった。
(株)アイエムディティ、先登録の商標権者である大企業と、共存同意により商標登録に成功した今回の事例は、韓国内のスタートアップが外国系大企業と共存同意を通じて商標権の登録を受けることで共存同意制度が成功的に安着していることを示しており、大企業と中小企業間の共生協力事例としての意味が大きいといえる。
原文出所:韓国特許庁の報道資料(2024-11-15)
韓国、GDP及び人口比、特許出願世界1位を達成
2023年、全世界で韓国内居住者の国内総生産(GDP)及び人口比の特許出願件数が最も多いことが明らかになった。
最近、世界知的財産機構(WIPO)が発表した報告書によると、韓国はGDP 1,000億ドル当たり7,309件の居住者特許出願を記録し、世界1位を占めた。2位は中国(4,875件)、3位は日本(3,974件)で、これは、韓国が経済規模に比べて高い革新性と技術集中度を有することを示す指標である。
全世界の特許出願件数は前年比2.7%増加し、約335万件を突破したものと集計された。特に、韓国は15,628件が増加し、世界的な特許増加率に大きく寄与した。
WIPOが発表した今回の指標は、韓国が「特許強国」を超えて「技術超格差の先導国」として位置づけられたことを意味し、グローバル知識財産の競争の中心に立っていることを示す。
原文出所:韓国特許ニュース(2024-11-28)
C&Sニュース
弁理士増員のお知らせ
特許法人C&Sは、新しく弁理士を増員し、様々な分野の業務能力をさらに強化しました。今後も有能な人材確保に積極的に取り組み、高品質の専門サービスをご提供できますよう努力致します。
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