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    C&S ニュースレター

      C&S ニュースレター No.48
      • Date2023/12/28 14:18
      • Hit 4,247

      • 化合物の結晶形発明の進歩性の判断基準
      • 2024年4月施行予定である商標法改正案
      • 二次電池、半導体など国家核心技術の特許出願が平均13.6%急増
      • 医療映像分析AI技術、韓国特許出願が年平均67.1%増加で世界2位
      • オリジナル人気製品「デザインのパクリ」難しくなる
      • C&Sニュース

      化合物の結晶形発明の進歩性の判断基準 _弁理士 ファン・ウテク

      [大法院2023.03.13宣告 2019フ11800判決]

      1. 概要
      一般的に、パラメータ値の分析値によって特定される化合物の結晶構造を請求の範囲とする発明を「結晶形発明」という。特定物質において、その構成は同一であるものの、結晶の基本単位である格子内の構造が異なる結晶を結晶多形(polymorph)という。純粋な化合物であっても結晶構造が異なると、溶解度、融点、吸水性などの物理的性質が異なるため、医薬品などの様々な分野で化合物の結晶多形に関する研究が行われる。特に、医薬品の製造時には結晶構造が異なる場合に、有効成分の化学的構造が変わるものではないため、生体内での薬理的活性は同一であるが、物性が異なって生体利用率や安全性などに影響を及ぼすため、薬品を製造する際には目的とする用途に最も適切な物性の結晶形を見つけることが重要である。
      このような結晶形発明に対する進歩性の判断に対して様々な論議が行われており、最近の結晶形発明に対する進歩性の判断基準をより具体的に提示した大法院の判決が下されていることから、今後、結晶形発明の登録可能性が高くなる可能性があり、最近の大法院の判例を紹介する。
      2. 外国の結晶形発明に対する特許要件の概要
      (A) 米国
      結晶形を限定したパラメータ値の差異のみで結晶形発明が登録される場合が多数ある。拒絶時、従来は主に新規性により拒絶されたが、最近では進歩性により拒絶される事例も多くなっている。米国特許庁(USPTO)は、結晶形の効果まで考慮して進歩性を判断しないものと把握される。

      (B) ヨーロッパ
      ヨーロッパ特許庁(EPO)は、結晶形発明をパラメータ発明と見なしているものと判断される。パラメータ値で限定された結晶形の場合には、

      そのパラメータ値が該当結晶形を表現するのに信頼できるほどのパラメータではない場合、公知の結晶形と同一であると見て新規性を認めず、請求する結晶形が公知されておらず、請求する結晶形の存在の予測が困難であるという理由のみでは進歩性を認めておらず、結晶多形の効果を解決すべき課題と見て、これに基づいて進歩性を判断する。
      (C)日本
      日本特許庁(JPO)は、医薬化合物である比較対象発明において結晶多形の存在を検討することは、通常行われることであったり、結晶多形において予想外の顕著な効果であると認められないという理由で、公知化合物の結晶形発明の特許登録を拒絶する場合が多い。
      3. 結晶形発明に対する法院判例の動向
      今まで大法院は、「結晶形発明は特別な事情がない限り、先行発明に公知となった化合物が有する効果と質的に異なる効果を有しているか、または質的な差がなくても量的に顕著な差がある場合に限ってその進歩性が否定されない。」と判示してきた(大法院2011.7.14.宣告 2010フ2865判決、特許法院2008.3.26.宣告 2007ホ3981判決、特許法院2009.6.12.宣告 2008ホ3858判決、特許庁の審査基準)。
      上記のような大法院の判断は、EPO及び日本と同様に、たとえ特定化合物に対して以前まで誰も結晶形が得られなかったにも関わらず、誰かが新たな結晶形を得たとしても製造方法の特異性及び顕著な効果の客観的立証がなければ、新たな結晶形を作る技術に対する学術的価値はあっても、それに対して特許を付与することはできないと判断したと見られ、このような判決が最近まで続いてきた(原審判決:特許法院2019.10.4.宣告 2019ホ1377判決)。

      4. 大法院2023.03.13.宣告 2019フ11800判決

      (A) 事案の概要
      本件出願発明(出願番号第10-2012-7000526号)は、「結晶」という名称の発明である。

      [第1項]
      粉末X線回折スペクトルを実施した際に、少なくとも回折角2θ:9.4度、9.8度、17.2度および19.4度に回折ピークを示す、2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(以下、「セレキシパグ」という)のⅠ型結晶
      [第4項]
      本件第1項発明の結晶を有効成分として含有する糖尿病性神経障害など症状の治療剤

      特許庁、特許審判員、特許法院は、全て「従来の結晶形発明に対する進歩性の判断基準」を適用して本件出願発明が進歩性がないと判断したが、最近、大法院は進歩性を認める判決を判示した。
      (B) 判示内容
      構成の困難性
      原審判決は、従来の大法院の判断と同様に、「本件出願発明の化合物AのI型結晶は、先行発明に開示された化合物と化学構造が同一であり、医薬化合物の製剤設計のために、その結晶多形の存在を検討することは、通常行われることであるため、格別の事情がない限り、上記のような差異点のみでは結晶形発明に該当する本件第1項発明に構成の困難性があるとは認められない」と判断した。
      [大法院の判断]
      しかし、最近、大法院は、結晶形発明の技術開発の特殊性を考慮する必要はあると認めながらも、多形体スクリーニングが通常行われる実験と、これにより結晶形発明の特定結晶形に容易に到達できるかは別問題であるため、上記のよ

      うな特殊性のみで結晶形発明の構成の困難性が否定されるとは断定できず、結晶形発明の構成の困難性を判断する際には、結晶形発明の技術的意義と特有の効果、その製造方法、予測できない有利な効果などを総合的に考慮して、通常の技術者が先行発明から結晶形発明の構成を容易に導出できるかを検討すべきであると結晶形発明の構成の困難性に対する新たな判断基準を具体的に提示しながら、結晶形発明のように医薬化合物分野に属する発明は、構成のみでは効果の予測が容易でないため、構成の困難性を判断する際に発明の効果を参酌する必要があり、発明の効果が先行発明に比べて顕著である場合、構成の困難性を推論する有力な資料となり得ると判示した(大法院2022.3.31.宣告 2018フ10923判決)。
      大法院の上記判決は、一般発明の進歩性判断方法と類似した方法として、本件第1項発明と先行発明の構成を対比した後、構成の困難性があると判断して本件第1項発明の進歩性を認めた。
      (2) 効果の顕著性
      [原審判断]
      原審判決は、粒子の直径差(14.7%)をあまり大きな差として認めず、出願人が主張する「ろ過性、乾燥性に優れて製造時間が短縮する効果及び医薬品の製造時の原薬の飛散が抑制されて、高度の安定性が確保される効果」は出願明細書に記載されていないと排除し、また残留溶媒の濃度に対する効果と再結晶工程における不純物除去に対する効果もそれぞれ量的に顕著な水準に至るものであると推論するには不足であると判断した。
      [大法院の判断]
      しかし、大法院の上記判決は、本件出願発明の詳細な説明に記載された粒子直径、残留溶媒の濃度、不純物除去の効果、安定性の効果が先行発明との差異があるとの理由で効果の顕著性を認めた。
      5. 結び及び参考
      今まで結晶形発明に対する進歩性判断について多くの論争があった。法院が結晶形発明に対する技術的困難性の現実性をあまり認めず、単に製造方法が進歩したか否かと効果の顕著性に対して厳しい基準を適用することで結晶形発明に関する技術発展を除外していると医薬業界と研究界は批判してきた。
      しかし、大法院の上記判決が結晶形発明の研究現実性と一般的な発明の進歩性の判断基準を適用して技術の困難性と効果の顕著性を判断することで今後、結晶形発明に対する特許登録がより容易になり、特許無効基準は相当高くなる可能性があるため、出願人と特許事務所は大法院の上記判決を上手く活用して特許明細書を作成する必要があると思われる。
      参考資料)
      1. 特許法院2019.10.04.宣告 2019ホ1377拒絶決定(特)判決
      2. 大法院2023.03.13.宣告 2019フ11800判決
      3. ユ・ヨンソン部長判事、「医薬発明の類型別特許要件の比較、分析」、特許法院の研究会資料、特許法院(2014.02.)、16頁~22頁
      4. 「第4版 知的財産訴訟実務」、特許法院知的財産訴訟実務研究会、博英社(2019.01.14)、268頁~267頁


      2024年4月施行予定である商標法改正案_弁護士/弁理士 イ・ジョンウォン

      商標法改正案が2023.10.6.に国会本会議を通過して2024.4月頃に施行される予定である。改正法は商標の共存同意制度の導入をはじめ、約10個のその他の改正事項を含んでいる。以下では、改正法の主要内容について検討する。

      1. 共存同意時に先登録商標と同一・類似した出願商標も登録可能
      現行商標法第34条第1項第7号によると先登録商標と同一・類似した商標は商標登録を受けることができない。現在、登録拒絶される商標の約40%が先登録商標との同一・類似を理由としており、そのうち約82%は中小企業・小規模事業者の出願に該当する。これによって中小企業及び小規模事業者の安定した商標使用の奨励及び出願人の便宜の引き上げなどのための制度改善が必要であるとの論議が続けられてきた。
      改正商標法では、先登録商標権者及び先出願人が同意する場合、先登録(先出願)商標と同一・類似した後出願商標も登録が可能なものと規定した(改正商標法第34条第1項第7号但書及び第35条第6項)。また適用対象の拡大のために、改正法律の施行以前に出願した商標であっても施行時点に登録可否が確定されていない件についても遡及して適用されるようにした。
      しかし、共存同意によって登録された商標に対する取消審判請求理由も新設して、該当商標が不正競争目的に用いられて需要者の誤認混同を引き起こした場合、商標登録の取消が可能である。新設された商標取消理由に対する取消審判請求の除斥期間は3年に規定した。一方、新設された取消理由により登録が取り消された商標と同一・類似した商標は審決確定日から3年間、再出願が不可能である。
      商標共存同意制が導入されると、先商標権者の同意下において使用予定の商標登録を受けて使用し続けることができるようになるため、中小企業・小規模事業者の安定した商標使用が可能になると見られる。また、先商標権者が事前に類似商標の使用に同意するようになるため、今後発生し得る商標紛争を事前に防止できる効果も期待される。
      今回商標法改正により導入される商標共存同意制度は、「留保型共存同意」であるため、商標権者の同意があるとしても先登録(先出願)商標と後出願商標の商標及び指定商品が全て同一である場合には商標登録を受けることができないという点に留意する必要がある。

      2. 登録料変換対象の拡大
      存続期間満了日の前に更新登録料を納付したり、登録料を分割納付して2回目の登録料を納付したものの、これによる存続期間開始の前に商標権が消滅された場合、現行商標法では登録料を変換しない。しかし、改正法では予め納付した登録料を変換するものと規定して、登録料納付に関する不合理な制度を改善した。

      3. 変更出願の優先権自動認定
      変更出願とは、出願内容の同一性を維持しながらも商標、団体表彰、証明表彰、相互間及び指定商品の追加登録出願を一般商標出願に、出願の形式を変更する制度をいう。改正法は、原出願に優先権主張または出願時の特例主張及び関連証明書類の提出がある場合、変更出願時にもこれを自動的に認定する内容を含んでいる。

      4. 国際商標の分割認定
      現行法は、国際商標については名義変更がある場合のみに分割を認めている。しかし、改正法は名義変更がない場合にも国際商標登録出願及び国際登録基礎商標権の分割を認めるものと制度を変更した。これは2019年改正されたマドリッド議定書規則(第27条の2)の改正事項を韓国国内法に反映したものである。


      二次電池、半導体など国家核心技術の特許出願が平均13.6%急増

      米中技術覇権争いによるグローバル不確実性が増加する中、今年上半期全体の特許出願は前年の同じ時期に比べ4.1%増加したのに対し、二次電子、半導体など主要国家核心技術分野における出願は、特許出願全体の約3倍以上である13.6%増加したことが分かった。
      全体技術分野のうち出願件数が最も多い二次電池分野は、前年同期(1~6月)に対して890件増加の8,660件が出願され、11.5%の高い増加率を示した。半導体分野は、前年同期に対して881件増加の6,580件が出願されて15.5%増加し、デジタル通信は前年同期に対して672件増加の5,110件が出願されて15.1%増加した。

      WIPO35大技術分野

      出願件数

      前年同期比

      増加率

      2022.6

      2023.6

      電気機械/エネルギー

      (二次電池一般)

      7,770

      8,660

      ▲11.5%

      半導体

      5,699

      6,580

      ▲15.5%

      デジタル通信

      4,438

      5,110

      ▲15.1%

      合計

      17,907

      20,350

      ▲13.6%

      こうした主要国家核心技術分野の出願増加は、韓国企業が世界的な不況下においても二次電池、半導体など未来を導く先端技術の主導権を守るために特許権の確保に急ぎ取り組んだ結果と分析される。

      特許庁は、景気不確実性が高まっているにも関わらず、国家核心技術分野を中心に韓国企業の今年上半期の特許出願が増加したことは非常に前向きであると明かした。

      原文出所:韓国特許庁報道資料(2023-09-17)


      医療映像分析AI技術、韓国特許出願が年平均67.1%増加で世界2位

      人工知能(AI)を活用した医療映像分析技術に関する世界中の特許出願が最近10年間急増している中、韓国国籍の出願が年平均67%増加して世界2位の成長ぶりを見せた。
      特許庁は、IP5(主要国特許庁)が出願された医療映像分析人工知能技術に関する世界中の特許を分析した結果、「11年には58件に過ぎなかった出願量が10年の間(‘11年~’20年)に年平均54.7%成長して、‘20年には2,946件に達した。特に、最近5年(‘16年~’20年)間の年平均増加率は70.9%と、出願の増加が加速化している」とした。

      出願人の国籍別でみると、韓国出願の増加速度は67.1%で世界で2番目に速く、中国が年平均86.8%で最も高い成長ぶりを見せた。
      特許庁は、「今回の分析により医療映像分析の人工知能(AI)技術の特許のハードルが高くないものであることが示され、韓国の中小企業にとって良い機会であると思われる」と明かした。

      原文出所:特許ニュース (2023-10-03)


      オリジナル人気製品「デザインのパクリ」難しくなる

      特許庁が「関連デザイン」の出願可能期間を1年から3年に拡大することで今後、人気製品のデザインを真似ることが難しくなる。併せて、本人のデザインに対する優先権主張の要件を緩和するなど、デザイン権者の権利を保護するデザイン保護法が12月21日から施行されると明かした。

                              [改正対象制度]
          1. 関連デザイン出願可能期間の拡大(1年→3年)
      本人の先行デザインと類似したデザインについてはデザイン保護法第33条及び第46条(新規性違反及び先出願主義)の違反により拒絶決定されず、登録が可能であるようにする制度
          2. 新規性喪失の例外主張適用拡大
      出願前に公開されたデザインは、新たなデザインではないという理由(新規性喪失)で登録が拒絶されることがあるが、公開してから12か月が過ぎていない本人のデザインについては例外に登録を受けることができる制度
          3. 優先権主張の要件緩和
      甲国家に先に出願したデザインを基に、乙国家に6ヶ月以内に同一のデザインを出願する場合、甲国家の出願日に出願したものと見なす制度

      特許庁は、「今回の改正を介して関連デザイン出願可能期間の拡大により企業の固有デザインを保護して企業革新と競争力強化に寄与し、新規性喪失の例外主張適用の拡大及び優先権主張の手続き規定の改善によって主要国法制と調和し、正当な権利者の保護が強化されるものと思われる」と明かした。
      今回の改正に関する詳しい内容は、2023.06.28.に発刊されたC&Sニュースレター第46号に掲載されている。

      原文出所:韓国特許庁報道資料(2023-11-29)


      C&Sニュース

      • 特許法人C&S、大田事務所開所

      去る2023年10月10日、特許法人C&Sは、大田広域市にC&S分所を開所しました。大田事務所には知識財産分野で20年以上優れた成果を認めているカン・ヒョンソク弁理士が務めています。カン・ヒョンソク弁理士は、高分子、有機化合物、2次電池分野の専門家として研究所および特許庁、他特許法人に勤務し、特許庁優秀審査官∙スマート審査官に選定された経験もあります。大田事務所は、国家R&D事業課題を重点業務とし、忠清圏周辺の化学分野の取引先の出願業務を担当しています。C&Sは、拡充した大田事務所とともにさらに発展した知識財産法律サービスを提供致します。

      • 弁理士増員のお知らせ

      特許法人C&Sでは、弁理士を新たに迎え、様々な分野の業務力量をさらに強化致しました。今後も有能な人材確保に積極的に取り組み、これまで以上に上質なサービスをご提供できますよう努力致します。