C&S ニュースレター
C&S ニュースレター No.50
- Date2024/06/28 17:32
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選択発明の進歩性判断方法とその対応方案
特許法院2024.1.28.宣告2021ナ1787判決から確認した「特許法」第128条第4項の損害額の意味
次世代ディスプレイ、「マイクロLED」技術 - 韓国の特許登録が世界1位
韓国、国際特許出願(PCT) 30年間持続的に増加
韓国、ヨーロッパ特許出願TOP5に初進入
技術覇権競争時代、海外特許へ突破口を設ける
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選択発明の進歩性判断方法とその対応方案 [大法院2024.5.30.宣告2021フ10022判決]
弁理士 ファン・ウテク
弁理士 イ・ヒジョン
弁理士 ユン・ビョンフン
1. 概要
化学、医薬などの技術分野に属する特殊な発明の形態として、先行技術または公知技術に上位概念が記載されており、上記上位概念に含まれる下位概念を構成要素とする選択発明に対して、韓国では2021年度を境に進歩性の判断基準が変わりました。2020年度まで選択発明に対する進歩性の判断は、下位概念が上位概念に含まれる(先行文献から直接的に選択発明の存在を認識することができる場合と考えられる)という理由で、構成の困難性に対する判断なしにただ先行発明に対する効果の顕著性のみで進歩性を判断していました。
しかし、2021年度からは、選択発明に対する進歩性の判断時にも一般的な特許法上の発明の進歩性判断と同様に「構成の困難性」も主な判断要件として採択されたため、「構成の困難性」が認められると進歩性が否定されません。しかし、「構成の困難性」の有無に対する判断が不明な場合には、「発明の効果」は選択の動機がなくて構成が困難な場合であるか、任意の選択に過ぎない場合であるかを区別することができる重要な目印となることができます。すなわち、「発明の効果」が先行発明に比べて顕著であれば、構成の困難性を推論する有力な資料として用いられることができます。
今回の寄稿文では、選択発明の進歩性判断に対する最近の大法院の判決を検討し、今後の特許出願書の作成及び登録無効時の対応方案に対して検討します。
2. 争点事項
この事件の訴訟の主な争点事項は、有機電界発光素子(OLED)などで用いられる電子素子用材料に関する化合物を請求の範囲とする特許発明が先行発明1、2の置換基と置換位置の選択によって、その進歩性が認められるか否かに関するものです。
3. 大法院2021フ10022判決の判示事項
A.この事件に関する特許審判院と特許法院は、上記特許発明が先行発明1、2と置換基の置換位置のみが異なるのみであって、化合物の構造が同一であり、置換基を異なる置換位置に置換させることに対する否定的な教示がなく、上記特許発明の寿命及び外部量子効率の効果が先行発明1、2と対比して異質的であるか、量的に顕著であると断定しにくいと判断しながら、上記特許発明の進歩性を否定しました。
B.「構成の困難性」に関して、大法院は先行発明の化合物中で特定の化合物や特定置換基を優先的にまたは容易に選択する事情や動機または暗示の有無、先行発明に具体的に記載された化合物と特許発明の構造的類似性などを総合的に考慮する必要があり、上記特許発明は、先行発明1、2から技術的意義がない任意の選択に過ぎない場合に該当するため、通常の技術者が先行発明1、2から上記特許発明を容易に導出することができると判断しました。
C.また、「効果の顕著性」に関して、大法院は、上記特許発明の明細書に記載されて、通常の技術者が認識するか、推論することができる効果と特許権者が提出した更なる実験資料を総合的に検討しても、上記特許発明の「効果」は、先行発明1、2の効果に比べて異質的であるか、量的に顕著な効果を有すると見ることはできないと判断しました。
4. 示唆点
特許庁、特許審判院、法院は、2021年度以後の選択発明の進歩性判断基準を適用しながらも選択発明が先行発明に比べて、構成の困難性と効果の顕著性を有するかについて具体的に確認しているものと見られるため、出願人(または特許権者)は、選択発明の「特許出願明細書の作成時」には、他の発明に比べて構成の困難性と効果の顕著性を表すための多くの努力を尽くすべきであると思われます。
A.選択発明を発明した出願人(または特許権者)は、関連した先行発明に対して検索を忠実に行い、上記検索結果を基に特許出願明細書に先行発明の化学式とその置換基の範囲内に理論上含まれ得る化合物の個数、先行発明の化合物中で特定の化合物や特定置換基を容易に選択することができない否定的な教示などに関する理由と先行発明に具体的に開示された化合物と特許発明の構造的非類似性などを具体的に記載する努力をする必要があると思われます。すなわち、通常の技術者は先行発明から特許発明に到達するためには、数多くの試行錯誤を必要とすることを示す必要があります。
B.また、特許出願明細書に特許発明と類似した先行発明との効果を対比し、質的な差が確認できる具体的な内容や、量的に顕著な差があることを確認することができる定量的記載によって可能な特許発明が異質的であるか、量的に顕著な効果を有していることを明確に示すために努力すべきです。
また、審査過程又は審判、裁判審理中に特許出願明細書の記載内容の範囲を超えない限り、特許発明の効果の顕著性を立証するための更なる実験資料を提出するなどの努力も併せて行う必要があります。
特許法院2024.1.28.宣告2021ナ1787判決から確認した「特許法」第128条第4項の損害額の意味
弁護士/弁理士 イ・ジョンウォン
特許侵害訴訟で最も重要な争点のうち一つは、損害賠償額の算定である。いかに正確且つ公正に損害額を算定するかによって特許権者の権利保護の程度が決まるためである。最近、特許法院2024年1月28日宣告2021ナ1787判決は、この分野に画期的な変化を示す内容の損害額の算定方式を認めた。今回のニュースレターでは、対象判決の意義と今後の特許訴訟に及ぼす影響を検討する。
1. 既存実務の限界:過小評価された損害賠償額
これまで、医薬品関連特許侵害訴訟で損害賠償額の算定は、主に国税庁経費率告示や韓国保健産業振興院の資料に頼ってきた。国税庁の資料によると、完成品医薬品の利益率は約14%、韓国保健産業振興院の資料によると、上場製薬企業の営業利益率は、10%内外であった。このような数値は、実際に特許技術が企業利益に寄与するところが大きく過小評価される傾向にあった。特に、高付加価値産業である製薬分野でこの程度の利益率は、現実をしっかり反映できないという指摘が多かった。
2. 対象判例における参考資料:韓国銀行企業経営分析データの活用
今回の特許法院の判決は、従来慣行に大きな変化をもたらした。法院は、国税庁や産業振興院の資料の代わりに韓国銀行の企業経営分析データを根拠としたが、このデータによると、輸出医薬品の利益率はなんと40%内外であり、従来の国税庁の資料の約3倍に達する。法院は、韓国銀行の資料の信頼性を高く評価した。該当試料は、合計492,288件の法人の国税庁法人税の申告資料に基づいて分析され、分析の主体と方法などを考慮した時、ある程度信頼性があると判断したものである。これは、特許権者へのより公正な賠償を可能とする重要なターニングポイントと評価される。
3. 「限界利益」から「貢献利益」に実質的寄与度を反映
今回の判決のさらに重要な点は、「侵害者の利益」の概念を「限界利益(marginal profit)」から「貢献利益(contribution margin)」に転換したことである。従来には主に限界利益、すなわち売上高から直接変動費を控除した金額を基準にした。
しかし、法院は特許法第128条第4項の「侵害者の利益」を貢献利益と見る必要があると判示した。貢献利益は、製品の売り上げが実際に企業の利益にどれくらい寄与したかを示す指標であるといえる。限界利益が直接変動費のみを控除するのに対し、貢献利益は、間接変動費も控除してさらに正確な利益寄与度を反映することができる。
4. 実務的意義:証拠不足問題の解決
実務上特許侵害損害額の算定の最も大きい問題は、「侵害製品の製造・販売のためにさらに投じられた費用」を直接証拠として算定しにくいということであった。今回の判決は、この問題に対する解決策を提示した。
法院は、「他の証拠と弁論の全体の趣旨を総合して、侵害者が実際に得た限界利益が同種業界の信頼性のある統計による貢献利益率を適用して算出されるものと類似するか、これを超過する余地があるという点が認められる場合」には、その統計を基準に限界利益を算定することができるとした。特許権者が侵害者の内部資料に接近しにくい状況で、信頼性のある業界統計を活用することができるようになった。
5. 侵害者の立証責任加重
判決はまた、立証責任の面においても特許権者に有利な立場をとった。もし、特許権者の実際の損害が推定した金額よりも少なければ、その事実を主張して証明する責任は侵害者にあるとした。これは、大法院2008年3月27日宣告2005ダ75002判決、2022年4月28日宣告2021ダ310873判決の立場を再確認したものである。これによって侵害者は単に特許権者の損害賠償の請求を防御することを超えて、積極的に特許権者の実際の損害が少ないという点を立証する必要がある。これは、侵害者の負担を大幅に増加させて、結果的に特許侵害を抑制する効果を奏すると評価される。
6. 結論
特許法院の今回の判決は、特許侵害訴訟の新たな道しるべとなった。韓国銀行の企業経営分析データを活用してさらに現実的な利益率を適用し、「貢献利益」概念を積極的に導入して特許技術の実質的な寄与度を反映した。また、証拠不足の問題と立証責任の問題に対する解決策を提示することで、特許権者の権利保護を強化した。これは、単に特定事件の賠償額を上げたのではなく、特許訴訟全般に影響を及ぼすものと見られる。韓国の法院がこれからも技術の価値を正当に評価し、核心を保護する判決を下すことに期待する。
次世代ディスプレイ、「マイクロLED」技術 - 韓国の特許登録が世界1位
大型TVとスマート機器などの様々な分野に活用可能な「マイクロLED」特許を韓国が最も多く出願したことが分かった。特許庁によると、韓国・米国・中国・ヨーロッパ・日本などに登録した特許を分析した結果、最近10年間のマイクロLED登録件数が540件から1,045件と2倍近く増加して、年平均増加率7.6%を記録した。
登録人の国籍をみると、韓国が23.2%(1,567件)と一番多かった。日本20.1%(1,360件)、中国18.0%(1,217件)、米国16.0%(1,080件)、ヨーロッパ11.0%(750件)の順に特許数が多かった。
また、同じ期間の年平均増加率は、中国(37.5%)、ヨーロッパ(10.0%)、台湾(9.9%)、韓国(4.4%)、米国(4.1%)の順であった。韓国と中国間の技術競争が一層激しくなる見込みである。
特許庁は、韓国企業がOLEDに続き、マイクロLED技術においても世界主導権を確保するためには、マイクロLEDチップの製造技術と転写工程の技術に対する研究開発を継続する必要があり、このために特許庁は、高品質の審査に関して特許情報を持続的に提供し続けていく予定であると明かした。
原文出所:韓国特許庁の報道資料(2024-04-07)
韓国、国際特許出願(PCT) 30年間持続的に増加
特許庁は、2023年韓国企業の国際特許出願(PCT)が前年対比1.2%増加して4年連続世界4位を占めたと明かした。
世界知識財産機構(WIPO)の統計によると、2023年における韓国出願人のPCT特許出願、マドリッド商標出願、ハーグデザイン出願は全て増加して、韓国企業の持続的な革新活動を立証した。
PCT多出願企業を見ると、三星電子2位、LG電子6位、LGエネルギーソリューション17位など韓国企業3社が上位20位の出願人に含まれ、韓国の出願数の増加を牽引した。
原文出所:韓国特許庁の報道資料(2024-03-22)
韓国、ヨーロッパ特許出願TOP5に初進入
特許庁は、ヨーロッパ特許庁(EPO)が最近発表した「特許指数2023(Patent Index 2023)」において去年、韓国が史上初めてヨーロッパ特許庁に出願した国のうち上位5か国に入ったと明かした。
韓国企業の特許出願件も初めて1.2万件を超えて歴代最高を記録し、前年対比の増加率も21%と1位を達成した。
上位10位の企業には、韓国、米国、ドイツからそれぞれ企業2社が、日本、中国、スウェーデン、オランダなどからそれぞれ企業1社が含まれている。中国のファーウェイが1位を示す中、三星、LG、クアルコムが後に続いた。特に、三星は前年対比58.9%増加した4,760件を出願して、上位10位の企業のうち出願増加率1位を記録した。
細部技術別にみると、韓国は二次電池などを含む電気機械・装置・エネルギー、半導体分野で2位を占め、最近、国家競争力を左右する重要技術として注目を浴びている同分野で他の国に比べて優位を示すと調査された。特に、半導体分野では、核心技術の先占のための韓国、米国、中国間の競争が激しいものと示された。
原文出所:特許ニュース (2024-03-26)
技術覇権競争時代、海外特許へ突破口を設ける
特許分野の5大先進国協議体であるIP5(韓国、米国、ヨーロッパ、日本、中国)が共同発表した「IP5核心統計指標」資料によると、去年、IP5国家に出された特許出願(自国出願含む)は、合計302万件と前年対比2.9%増加した。
このうち、韓国人が韓国を除く他の4か国に出願した件数は年々増加して、前年には8万3821件と前年対比9.4%が増加した。米国に出された出願が4万3310件と半分以上(51.7%)を占め、続いて中国23.9%、ヨーロッパ15%、日本9.4%の順に占めた。
海外で特許登録された割合も、韓国人が最も多かった。去年、米国、ヨーロッパで審査された韓国人の出願のうち特許を受けた件数の割合は、それぞれ85%、78.1%と、IP5国家別特許出願のうち最も高く、2位の中国とも5%ポイント以上の差を見せた。
特許庁は、「国家間の技術競争が日々激しくなる状況において、特許を介して海外での独占的権利を確保することは、企業の生存と直結する。韓国企業が海外で緻密な特許網を構築できるように多様な支援策を発掘していく計画である」と明かした。
原文出所:韓国特許庁の報道資料(2024-05-15)
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2024 INTA年例会議への出席
去る5月18日(土)~22日(水)に米国アトランタで開催された2024 INTA国際会議に、当法人のイ・イフン代表弁理士、アン・ホンジュパートナー弁理士、イ・ジョンウォン弁護士が参加しました。世界各国の弁理士や専門家と打ち合わせを行いながら、最新のIPイシュー及び法制度の変更を共有し、協力関係の構築を促す場となりました。
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